(報道発表資料)
2024年3月29日
千葉大学医学部附属病院
NTTライフサイエンス株式会社
千葉大学病院とNTTライフサイエンス、ファーマコゲノミクス (PGx)を用いた精神科薬物治療の個別最適化に関する共同研究を開始
千葉大学医学部附属病院(病院長:横手幸太郎、以下「千葉大学病院」)と、NTTライフサイエンス株式会社(代表取締役社長:是川幸士、以下「NTTライフサイエンス」)は、ファーマコゲノミクス (PGx)* の精神科薬物治療への活用に関する共同研究を2024年4月1日より開始します。これにより、個々人にあった最適な医療(プレシジョン・メディシン)と薬物療法の安全性・有効性の向上や薬剤費(医療費)適正化に寄与することをめざします。
*ファーマコゲノミクス (PGx)とは、遺伝子検査によって患者自身の薬剤応答などの遺伝的特徴を把握し、個々の患者に最適な薬剤を選択すると共に、最適な用法用量で投与することを目的の一つとする技術です。遺伝子検査では、次世代シーケンサー(NGS)の技術を活用した全エクソームシーケンス(WES)を用いることにより、より網羅的な検査結果を実現します。
1.背景と目的
千葉大学病院は、高度な医療の提供、技術の開発および研修を実施する能力などを備えた病院として、厚生労働省より特定機能病院および臨床研究中核病院に指定されており、地域や日本の医療発展へ貢献する役割を担っています。そのなかで千葉大学病院精神神経科は「目の前の患者さんに最善の医療を提供し、将来さらによい医療が提供できるよう努力する」をモットーに、新しい治療を積極的に推進し、精神障害の病態解明や新しい診断法・治療法の開発と普及に取り組んでいます。
精神神経系疾患の治療薬の効果や副作用には個々人が持つ代謝酵素やドパミンの特性が関連していることが知られており、これらと相関関係がある遺伝子多型の研究も近年進んできております。また、次世代シーケンサー(NGS)を用いた全エクソームシーケンス解析(WES)を活用することにより、既製品のマイクロアレイを用いたジェノタイピングでは読み取ることが難しい、
・代謝酵素などのファーマコゲノミクス(PGx)関連変異
・ドパミン関連変異など
も含めた網羅的なゲノムを特定することが可能となるため、研究の精度が高まることが期待されます。
今回、NTTライフサイエンスのファーマコゲノミクス (PGx)を活用し、千葉大学病院と共同で研究することで、難治性の精神疾患患者の遺伝的要因、特にドパミン関連の複数のSNPに注目して、向精神薬に対する有効性および忍容性と、網羅的な遺伝子多型情報との関連を、人工知能(AI)による解析から検証します。
2.本研究の内容
千葉大学病院精神神経科の臨床研究において、全エクソームシーケンス解析(WES)によるファーマコゲノミクス (PGx)を活用した共同研究を行います。
過去20年間に収集した、統合失調症または双極性障害と診断された患者さまおよび健常者さまの遺伝子サンプル(約1000サンプル)を、全エクソームシーケンス解析(WES)により遺伝子情報解析します。
解析した遺伝子情報と千葉大学病院内の電子カルテより抽出した臨床情報や処方歴(期間、投与量)などと突合し、関連解析を実施します。利用頻度および遺伝子影響が知られる非定型抗精神病薬、気分安定薬、抗てんかん薬に着目して解析します。
特定の薬剤の処方歴(期間、投与量)や臨床情報とドパミン関連の機能的SNPなど遺伝子情報との関連を探索的に解析することで、有効性および忍容性を踏まえた当該患者における最適な抗精神病薬などの向精神薬の薬剤選択と投与設計に活用することをめざします。
3.本研究開発における各機関の役割
■千葉大学病院
・臨床情報・遺伝子サンプルの活用、遺伝子情報および臨床情報を用いたAI解析
■NTTライフサイエンス
・全エクソームシーケンス解析(WES)、遺伝子情報および臨床情報を用いたAI解析支援
4.今後について
千葉大学病院では本研究をもとに、患者個々人にあった最適な薬物療法の提供(プレシジョン・メディシン)など、特定機能病院として高度な医療技術の開発・評価へ貢献していきます。
また、NTTライフサイエンスは全エクソームシーケンス解析(WES)によるファーマコゲノミクス (PGx)の医療分野での活用を促進することを通じ、日本の医療発展や、医療費の適正化の実現に貢献してまいります。
<本件に関するお問い合わせ先>
NTTライフサイエンス株式会社
ライフイノベーション部
Email: nttlsc-li-ml@ntt.com