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認知症予防のためにできること

公開日: 2024.03.18

健康増進分野

認知症予防のためにできること

目次

認知症は、脳の神経細胞が損傷し、記憶力や判断力などの認知機能が低下する病気です。高齢化が進むに伴い、認知症患者数は増加しており、日本では2025年には670万人を超えると予測されています。

 

認知症は、まだ完全に治癒する方法は確立されていませんが、予防することは可能です。ここでは、認知症予防のためにできることを紹介します。

認知症は、どんな病気?

「認知症」とは、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、記憶力・判断力といった認知機能が低下し、社会生活に支障をきたす状態をいいます。

 

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究(厚生労働省)」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。

 

認知症の人の推定人数・有病率の将来予測

※内閣府「平成29年度版高齢社会白書」より引用

認知機能の低下と聞くと、もの忘れをイメージするかと思います。

ただ「認知症」は、「加齢によるもの忘れ」には違いがあります。どこまでの範囲を忘れているのか、もの忘れの自覚があるかなど、一部ではありますが差異は下記のようになります。

「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いの一例

※政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」より引用

また認知症は、うつやせん妄などの症状が似た病気もあるため、早期に適切な診断を受けることが大切です。

認知症の原因となる病気

認知症は、脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、記憶力・判断力といった認知機能が低下することにより発症します。では脳の神経細胞の動きが低下する原因には、どのようなものがあるのでしょうか。以下が、その原因となる代表的な病気として挙げられます。

【アルツハイマー型認知症】

認知症の原因としては最も多く、7割近くを占めるといわれます。

長い年月をかけて、脳にアミロイドβ、リン酸化タウというタンパク質がたまることで、認知症が発症すると考えられています。記憶障害から始まることが多いですが、聞こえていても話がわかりづらくなる失語や、視力は問題なくても見えているものを認識しづらくなる失認、手足の機能は問題ないのに今まで出来ていた動作が難しくなる失行などを発症することもあります。

 

【血管性認知症】

脳梗塞や脳出血といった脳血管障害により、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなって認知症を発症するケースです。脳内の脳血管障害を起こした部位により、症状は異なります。まひなどの体の症状を伴うことが少なくありません。

 

【レビー小体型認知症】

脳にαシヌクレインというタンパク質がたまることで、認知症を発症すると考えられています。症状は人によって異なりますが、記憶障害などの認知機能障害のほか、実際にはないものが見える幻覚や、転びやすくなる・歩きにくくなるなどの症状、睡眠中に夢をみて叫んだりするような症状を伴う場合もあります。

 

【前頭側頭型認知症】

何らかの原因により脳や脊髄の神経細胞が徐々に失われる神経変性によって、認知症を発症すると考えられています。脳の一部である「前頭葉」や「側頭葉前方」の委縮がみられるのが特徴です。万引きのような軽犯罪を起こしたり、相手に対して遠慮ができなくなり暴力をふるったり、同じ動作を繰り返したりするようになります。

 認知症を予防するには

では、認知症を予防することはできるのでしょうか。

認知症は、脳の神経細胞の働きが徐々に不活性化して、記憶力・判断力といった認知機能の低下により、社会生活に支障をきたす病気です。そのため、基本的には脳を健康な状態に保つことが予防策となります。

 

近年、認知症を発症した人と発症しなかった人の違いを研究することで、認知症の「危険因子」と「緩和因子」がわかってきました。

 

脳の神経細胞の働きを徐々に不活性化させる「認知症の危険因子」としては、下記のような要素があるといわれています。

・高血圧、肥満、糖尿病

・過脂肪食、高カロリー食

・運動不足

・喫煙

・ひきこもり、うつ

など

 

それに対して、脳の神経細胞の働きを活性化させる「認知症を緩和させる要因」として、下記のような要素があるといわれています。

・運動

・食事(魚、果物、野菜)

・対人交流

・文章の読み書き

・ゲーム

など

 

「認知症の危険因子」に対して、生活習慣で「認知症の緩和要因」を強化すれば、認知症予防対策になると考えられています。そのため、生活習慣による予防対策が大切になるのです。

認知症になりにくい生活とは

では、どのような生活をすれば認知症を予防できるのでしょうか。

中高年世代の認知症予防には、糖尿病等の生活習慣病を防ぐことや、食事や運動習慣に気を配った健康的なライフスタイルの実践が大切だと考えられています。

 

【食事は、青魚や野菜・果物が有効】

食事では、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)を多く含む青魚、βカロテンやビタミンC、ビタミンEなどを含む野菜や果物の摂取が、認知症の発症リスクを軽減させると考えられています。

 

【運動は脳の神経を成長させる】

また運動すると、脳の神経を成長させるBDNF (脳由来神経栄養因子)というタンパク質が、記憶をつかさどる海馬で多く分泌され、活性化されます。さらに、簡単なダンスのステップのように、脳を使いながら運動することで脳の血液量も増えて、より多くのBDNFが分泌され、脳の神経を成長させると考えられています。

【積極的な社会参加も効果あり】

認知症の発症には、人との接触頻度も大きくかかわっています。

一人暮らしの人や友人とほとんど交流のない人は、夫婦同居や友人と週1回会っている人に比べて、認知症の発症リスクが8倍になるという調査(※)もあります。地域活動や趣味の場に参加するなどの社会参加が大切です。

※スウェーデン・カロラインスカ研究所の調査(2000年)

年代別の認知症予防対策

では、このような認知症予防対策は、いつ頃からどのようなことができるのでしょうか。

認知症を発症する原因の一つには脳血管障害があり、その多くは動脈硬化が原因といわれています。そのため、若い頃から動脈硬化になりにくい生活習慣を身につけていれば、認知症予防対策にもつながってくるのです。実際に、どのような対策が有効なのか、年代別に対策方法を確認していきましょう。

■20代~30代(青年期)

若い世代が脳の血流を活性化させるためには、勉強・学習という方法があります。

学術的な勉強に限らず、様々なことを一生懸命に考えるだけでも、神経ネットワークが強化されるため、認知力が蓄えられると考えられています。しっかりと認知力が蓄えられていれば、仮に認知機能の低下が始まっても、日常生活に支障をきたすレベルまで低下するのに時間を要するため、認知症の発症を遅らせることができます。また、運動習慣を若い頃から身につけておくと、年を取ってからも継続して運動が身につく可能性が高くなるため、若いうちから運動習慣を身につけておくことも対策のひとつです。

 

■40代~50代(中年期)

中年期には、生活習慣病の「高血圧」「肥満」そして「難聴」が、認知症の発症リスクを高める危険因子になると考えられています。高血圧や糖尿病は、難聴になるのを早める要因となるため、「塩分とカロリーを意識した食生活」が予防対策となります。厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準(2020年版)』では、高血圧予防のための塩分摂取は男女ともに6.0g/日未満、体格指数(BMI)は男女とも40代は18.5~24.9、50代は20.0~24.9を目標値に定めています。

 

■60代以降(高年期)

高年期の認知症における危険因子としては、「喫煙」「運動不足」「うつ」「糖尿病」などが考えられます。特に喫煙は、認知症リスクを2~3倍上昇させる(※)といわれています。また「うつ」もこの時期にかかると、認知症の発症リスクを高めます。脳内のセロトニンという神経伝達物質が不足する「うつ」には、セロトニンを増やすための「動きが規則的に繰り返される運動」が効果的だといわれています。そのため、定期的にジョギングやウォーキング、サイクリングや水泳などのようなリズミカルな運動を行うといいでしょう。

※オランダの高齢者コホート「ロッテルダム研究(1998年)」による

持続した認知トレーニングで「認知機能の低下抑制」が検証される

上記のような予防対策に、どれほどの効果があるのか気になる場合もあるかもしれません。そこで、持続した認知トレーニングにより、「認知機能の低下抑制」が検証された研究例を紹介しましょう。

 

2023年10月、国立長寿医療研究センターなどによる「J-MINT研究」で、軽度認知障害を有する高齢者における「多因子介入プログラム (生活習慣病管理、運動、栄養指導、認知トレーニング)」は、認知機能低下の抑制およびフレイル予防に有効であることが明らかになりました。

 

J-MINT研究では、65歳~85歳の軽度認知障害を有する高齢者531人を対象に、18ヵ月間のランダム化比較試験を実施しました。

 

「生活習慣病管理」「運動指導」「栄養指導」「認知トレーニング」の4つの介入プログラムを行う「介入群」と、受けないグループ「対照群」(生活習慣病管理と2ヵ月に1回の頻度の健康情報提供のみを提供)に分類し、18ヵ月間の認知機能の変化を比較しました。

 

その結果、主要評価項目である認知機能のコンポジットスコア(総合評価)では、統計学的な意差は認められませんでした。しかし、アルツハイマー病の危険因子として知られている「アポリポタンパクE遺伝子のE4多型の保因者」に絞って検討したところ、介入群では認知機能が維持され、18ヵ月間の認知機能の変化に統計学的な有意な差が認められました。

 ただ同調査期間はコロナ禍であったため、介入プログラムの提供を中断せざるをえなくなったり、運動教室に参加できない被検者がいたりする状況でもありました。そのため、介入群を全78回の運動教室の70%以上に参加したグループと、70%未満のグループにわけて、認知機能の変化を比較しました。

 

その結果、運動教室に70%以上参加していたグループでは、70%未満のグループ・対照群と比較して、認知機能が改善していたことが示されました。そのほかにも、食物多様性・血圧・BMI、身体組成(脂肪量、筋肉量)・運動機能(歩行速度、5回椅子立ち座り時間)などの改善が認められ、グループ内で身体的フレイル者のいる割合も、対照群では8%でしたが、70%以上参加したグループでは1%と減少していることが示されました。

このような研究により、「多因子介入プログラム(生活習慣病管理、運動、栄養指導、認知トレーニング)」がアポリポタンバクE遺伝子のE4多型の保因者における認知機能低下抑制効果を示し、さらに「継続して多因子介入プログラムに参加すること」で、認知機能が改善すること、そしてフレイル予防にも効果があることが示されたのです。

認知症の発症リスクを「遺伝子検査」でチェック

上記のように、生活習慣や認知トレーニングなどで認知症を予防することはできます。

ただ、「自分にどの程度、認知症のリスクがあるか」は、多くの方が気になるのではないでしょうか。

 

日本における認知症でもっと多いのが、アルツハイマー型認知症です。

このアルツハイマー型認知症は、アミロイドベータペプチドという老廃物が脳内に蓄積し、神経細胞がダメージを受けることで発症します。このアミロイドベータペプチドの蓄積に大きく関わっているとされているのが、ApoE(アポイー)遺伝子のタイプとされています。

このApoE遺伝子のタイプは6パターンの遺伝子型を構成しており、遺伝子のタイプによってアルツハイマー病発症リスクが異なることがわかっています。最も遺伝的なリスクの高いタイプでは最大12倍程度リスクが高くなると言われています。

ただし、アルツハイマー病の発症は遺伝的要因以外に加齢や生活習慣なども関係しています。また、糖尿病や高血圧がアルツハイマー病のリスク因子ともいわれています。生活習慣の改善など適切な予防を行えば、アルツハイマー病の発症を防ぐことや遅らせることができると最近の研究でわかっています。

 

「遺伝子検査」により「自分の認知症のリスク」を知っておくことで、予防のための対策をより効果的に行うことができます。遺伝子検査サービスは、認知症予防の第一歩となるかもしれないのです。

当社の遺伝子検査サービス「Genovision Dock®」

当社の遺伝子検査サービス「Genovision Dock®」は、健康診断や人間ドックで得られる「今の健康状態」に加え、「将来の疾患リスク」や、「自分の体質」について知るための検査です。がんや認知症(アルツハイマー病)をはじめとした、約90の病気や体質のリスクが分析できます。

 

多くの病気は「遺伝要因」よりも生活習慣などの「環境要因」が大きく影響しているといわれているため、当社では検査結果とともに生活習慣改善のアドバイスを提供しています。

 

当社の遺伝子検査サービス「Genovision Dock ®」のレポート例

このような生活習慣改善のアドバイスにより、当社検査を実施した人の約60%が受診をきっかけに「行動を変えようと思うようになった」、半数の方が「バイタルデータを意識するようになった」と回答しています。(当社調べ)

 

「遺伝子検査」により認知症(アルツハイマー病)の疾患リスクを把握して、正しい予防対策を行うことができるようになってきているのです。ぜひ、認知症の発症リスクがどの程度あるのか、そのリスクへの対策はどのような方法があるのか、確認してみてはいかがでしょうか。

 

当社の遺伝子検査サービス「Genovision Dock®」の詳細はこちらをご覧ください。

https://service.ntt-lifescience.co.jp/rpts/anonymous/aboutdna#about

 

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